(Leaf Visual Novel Series vol.3) "To Heart" Another Side Story

 

芹香先輩 --pattern two

Episode:来栖川 芹香

 

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written by 尾張




「…ひろゆき…さん…」
 鼻にかかった先輩の可愛らしい声が、オレの神経を痺れさせていく。
 先輩とつながっているところからは、いやらしい音が漏れていた。
 くちゅ、くちゅ、くちゅ。
「ん…んんっ」
 オレが中に進むたびに、先輩は可愛らしい声を上げる。
 オレが戻るたびに、先輩は切ない声を上げる。
 まるで身体全部がつながっているかのような錯覚を、オレは感じていた。
 先輩も、同じように感じているんだろうか?
「芹香の中…あったかくて…とても気持ちいいよ」
「ああっ…ひろゆきさん…」
 言葉でも、先輩を気持ち良くさせてあげたい。
 身体でも、先輩に感じさせてあげたい。
 つながったまま、オレは先輩のきゃしゃな身体を、両手でしっかりと抱きしめた。少し
の間、動きを止めて肌を合わせる。
「こうやって、身体を重ねあっていると、安心するんだ」
 乱れた長い髪に隠された、先輩の可愛らしい耳に唇を寄せて、そうささやく。
「私も…ひろゆきさんの暖かさを感じるの…好きなんです…」
 頬を上気させた先輩が、あえぐようにつぶやく。
 そのまま、二人は、時間が止まったかのように抱き合っていた。
「芹香も…最近感じるようになってきたのかな。最初のときは別だけど、はじめのうち
は、あまり気持ち良くならなかっただろ?」
 オレは、少し意地悪な質問をした。
 返事を待たずに、先輩の背中に手を回して、肌に指先を滑らす。最近見つけた、先輩
のポイントだ。
「あっ…」
 ぴくっと、先輩の身体が震えた。
 そのまま、指をかすかに触れながら、首筋の後ろまで肌をつたわせる。
「ああっ…」
 背中を伸ばすようにして、先輩が身体を弓なりに曲げた。眼を薄く閉じたまま、恍惚
の表情を浮かべる。
「芹香は、相変わらずここが弱いんだ…」
 いじわるな声を出しながら、同じところに何度も指をはわせた。
「あっ…ああっ…あああっ」
 声にあわせるように、きゅっきゅっと、先輩の中がオレを締め付けてきた。狭くて暖か
いものに包まれる感触。
 痺れるような快感が走る。
「ホントにHなんだ、芹香って」
 髪をかき分けて、うなじに触れる。生え際にそって、耳の後ろまで指を滑らした。
「あ…ひ、ひろゆき…さ…ん」
 ぴくぴくっと、細かく身体を震わせながら、何度も何度も、先輩がオレを締め付ける。
 オレは、ゆっくりと、進んだり、戻ったりを繰り返した。
 先輩の暖かさを感じるように。
 オレを先輩に感じてもらうように。
 胸に指をはわせ、小さく可愛らしい乳首を愛撫する。固くなった先端が、オレの指に
抵抗するように、ぴんと立っている。
 柔らかな胸のふくらみを、手のひらに収める。ふかふかのましゅまろのような感触は、
まるで握ったらつぶれてしまうような錯覚を覚えさせてくれた。
「ひろゆきさん…好き…愛してる…」
 うわごとのように、先輩が何度も何度も、オレの名前を呼んでいた。
 名前を呼ばれるたびに、先輩に対するいとしさが、オレの中で高まっていく。
「芹香…愛してるよ…」
 何度も何度も、先輩の呼び掛けに応える。
 深く深く、先輩の中に入っていく。
 頭の中が、真っ白になっていく。
「んっ…あっ…はあっ」
 先輩の吐息が、少しずつ荒くなっていく。
 上気した肌が、先輩の高ぶりを教えてくれる。
「あっ…ああああああっ…い…あっ……ひろゆき…さ…」
 白くて綺麗な先輩の指が、シーツを握りしめていた。波を打ったようになったシーツ
の中に、新たなしわを刻んでいく。
 オレは、先輩の小さな手を、上から手のひらで包み込んだ。自分の想いを重ねるように、
しっかりと握りしめる。
「あんっ…ああっ…ああんっ…」
 先輩の身体が大きく反り返ると、小さく、何度も何度も、細かく震える。
 きゅっ、きゅきゅっ、きゅっきゅきゅっ。
 身体の震えにあわせて、これまでよりも強く、激しく、先輩がオレを包み込んだ。
 オレは背中を何かが走り抜けていくのを感じ、そして、先輩が最後に大きく身体を震わ
せるのと同時に、達した。
 身体中に、芹香への想いがあふれてきて…。
 頭の中が、先輩へのいとしさでいっぱいになって…。
 身体を重ねたまま、しばらくの間、オレはそのまま先輩の中をただよっていた。


 心地よい疲れの中で、先輩の肌のぬくもりを感じていた。
 すうすうという、規則正しい寝息が、先輩の存在を感じさせてくれる。
 肌を重ねる。
 気持ちを重ねあう。
 身体に触れる。
 心を触れあわせる。
 何度となくおこなってきた、儀式。
 お互いの愛を確かめあうための、行為。
 身体を重ねあったあとに、いつもオレの中で問いかけが生まれる。
 …本当に、彼女のことが好きなのかい?
 …彼女の気持ちを利用して、気持ち良くなりたいだけなんじゃないのかい?
 …女の身体が欲しいから。
 …快感に酔う瞬間が欲しいから。
 違う。
 違う違う違う。
 オレは、先輩のことが好きだ。
 好きだから、言葉だけじゃなく、心も、身体も、先輩のすべてを感じていたい。
 感情を映す瞳も可愛らしい口もともつややかな長い髪も綺麗な白い肌も握ると壊れそ
うなきゃしゃな指先も柔らかな胸のふくらみも淡い陰りも…そして、先輩の心を表して
くれるような暖かな身体も。
 だから…。
 だから、オレは…。
 先輩と…。
 先輩と…。
 ……。
 やわらかい何かが、そっとオレの頭を包み込んだ。
 先輩の腕だ、と理解するまでに、ほんの少しの時間が必要だった。
 どうしたんですか、と。いつもと変わらない優しい声が、オレを現実に引き戻してくれた。
 どうやら、知らないうちに涙を流していたらしい。閉じたまぶたが、気持ち悪いくら
い濡れていた。
 目をあけると、心配そうにオレを見つめる先輩の顔がある。
 起こしてしまったらしい。
 ゆっくりと、オレの頭をなでてくれていた。
 なにか、怖い夢でも見たんですか、と。安心させるようにオレの頭を抱えながら、ゆっ
くりと、あやすようになで続けてくれていた。
 全身で感じる先輩の肌のぬくもりを、包まれた頭から感じられる先輩の優しさを、
指先から感じられる先輩の思いやりを。
 それに身をゆだねるうち、先ほどまでの不安が、宙に溶けるように消えていった。
「オレ…先輩がいないと、だめみたいだ。先輩がいない世界なんて考えられないくらい、
先輩のこと…好きだよ」
 つややかで可愛らしい先輩の唇に、そっと唇を触れ合わせる。
 細い身体を、きつく抱きしめる。
 とくん、とくんと、規則正しくひびく先輩の心音が、重ねあった肌を伝わってオレの中
に響いてくる。
 先輩の呼吸に合わせて、おだやかに上下に動く胸のふくらみが、抱き合った身体から
オレに安心を運んでくる。
 私も、浩之さんのことが、好きです。
 言葉を確かめるようにゆっくりと、先輩がささやいた。
 言葉でしか確かめられない、きもち。
 身体で確かめあう、きもち。
 こころで感じあう、きもち。
 言葉だけでは満たされない、きもち。
 身体だけでも満たされない、きもち。
 こころをかよいあわせて、はじめて満たされる、きもち。
 なぜ、言葉を交わしあうのか。
 なぜ、身体を重ねあうのか。
 先輩に、もっとオレを感じてもらいたいから。
 オレが、もっと先輩を感じていたいから。
「先輩…愛してるよ」
 短い言葉に、すべての想いをのせる。
 私も、愛してます。
 返ってくる先輩の短い言葉に託された、あふれるほどの想いが、頭の芯に溶けていく。
 問いかけは、もう生まれなかった。
 オレは、先輩のことが好きだから。大事にしたいと思っているから。
 想いが、身体を求めるから。
「先輩…オレ、もう一度したくなってきた。…いいかな?」
 抱きしめあったまま、耳もとでオレがそうささやくと、先輩は真っ赤になってうつむき
ながら、小さく、はい、と答えた。



                  fin.









 


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