『大切なもの』 〜 To Heart HM-13 セリオ 〜
「──タカヒロ様」
セリオが、僕の名前を呼んだ。
「なんだい、セリオ?」
不思議そうな顔で僕を見ているセリオに、応える。
「その──ご主人様のなされることに対してこんなことを言ってもいいものか
どうか分からないのですが──」
申し訳なさそうに、セリオが言葉を紡ぐ。
「──なんで私にこんな恰好をさせるのですか?」
「…いや、メイドロボでご主人様とくれば…ほら、あれだ」
セリオは、前時代的なメイド服に身を包んでいた。
偶然、街の怪しげな店で見つけてきたものだ。安い買い物ではなかったが…
それは、セリオによく似合っていた。
「可愛いよ、セリオ」
「ご主人様──」
少しはにかんだ微笑み。
恥ずかしがったその表情は、僕の理性を吹き飛ばすだけの十分な破壊力を
もっていた。
「セリオ…そこに立って」
「こう──ですか?」
ふわりと、長いスカートのすそが広がって舞う。
長い髪をアップにまとめたせいで、えりのすき間から見えるうなじが色っぽい。
「壁のほうを向いて…そう」
僕の言葉通りに、壁に向かって立つセリオを、後ろからゆっくりと抱きしめた。
「いけません、ご主人様──あっ」
柔らかな布の下に収まった弾力のあるふくらみを、少し乱暴に手のひらで
包み込む。
セリオが、ぎゅっと目を閉じた。
「んっ──」
鼻にかかった、甘い声がもれる。
頭の芯からとろけそうなほどの興奮を、僕は感じていた。
セリオのうなじに、ゆっくりと唇を触れる。
冷たい中に…少しだけ暖かい感触。
「セリオ…」
唇を、わずかに浮かせただけで言葉を形づくった。
そのまま、舌で髪の生え際をなぞる。
手の中で、セリオの胸が複雑に形を変えていた。ブラは…当然のことながら
付けていない。
「い、いけません──ご主人──さま」
繰り返される、セリオの言葉。その中に、先ほどとは違う甘えた響きがあった。
聞こえないふりをして、うなじから耳元へと舌先を動かした。
カバーは、外してある。
普段は隠されている、セリオの綺麗な耳。僕は、それを軽く噛んだ。
「あ…」
セリオの身体から、力が抜ける。
耳は、セリオのいくつかある弱点のうちの一つだ。もちろん、僕はそれを
知っていた。
柔らかな耳たぶを、甘く唇で刺激する。
そのたびに、セリオは切ない吐息を漏らした。
手の中にある胸の、指先に降れる突起が、徐々に固さを増していた。
「セリオ…こうされるの、いやかい?」
わざと、少し意地悪な質問をする。
きゅっと目をつぶったセリオが、無言のまま、軽く首を振った。
「ご主人様に触れられるのは好きです。──でも」
精一杯の、けなげな言葉。
「そのまま、動かないで」
身体の位置を変えながら、僕はセリオにささやいた。
「ご主人様、なにを──」
スカートのすそを、ゆっくりとまくりあげていく。
すらりとした足が、僕の目に飛び込んでくる。
その肌に、僕は手のひらをあてた。
少しずつ、上へと動かす。
下着に、指先が触れる。
お尻の上の部分に手をかけると、そのまま一息にそれを引き下げた。
「い、いけません──」
めくりあがった服の中に、セリオの下半身があらわになった。
「足を…少し開いて」
セリオは、僕の言葉に少しためらいを見せながらも、素直にしたがった。
足の間に後ろから手を差し入れ、セリオ自身に触れる。
濡れた感触が、指先に触れた。
「セリオ…もう感じてるんだ」
「ご主人さまの指──だからです」
鼻にかかる声で、セリオは答えた。
濡れたまなざしを、セリオがゆっくりと伏せる。
指先を、セリオの体内へとゆっくりと差し入れた。
ちゅ、くちゅ。
動かすたびに、セリオのなかで僕の指が音を立てる。
「ん──あっ」
ざらりとしたひだをなぞると、セリオの身体が跳ねた。
「ご主人様──」
膝がこきざみに震えているのが分かる。
くずれ落ちそうになる身体を、壁についた手と力の入らない足とで必死に
支えているようだ。
「しゃがんでもいいんだよ、セリオ」
僕がそういうと、張り詰めていた糸が切れるかのように、セリオの身体から
力が抜けた。
壁に身体をもたれ掛けるようにして、ずるずるとセリオの身体が落ちていく。
ぺたんと、身体が床に触れた。
僕の手とつながっている、下半身だけが高く突き出されている。
「──恥ずかしい…です」
紅い顔をそむけたまま、セリオが消え入りそうな声を出した。
それには応えず、空いているほうの腕をセリオの身体の下に差し入れ、
そのまま仰向けにする。
両足を持ち上げるようにして、膝を立てる。
そのまま、ゆっくりと足を開かせた。
少しめくれ上がったスカートの下には、なにもつけていない。
奥に、淡い陰りが見えた。
ふたたび、そこに指を触れる。
「──んっ」
ぴくんと、セリオの身体が反応する。
乱れた衣服と、セリオの恥らいの表情が、僕の興奮を誘っていた。
我慢ができない。
僕は、十分に濡れているのを確認すると、自分をあてがった。
「いくよ、セリオ」
「──はい」
何度となく交わしたことのある、確認の言葉。
そのまま、ゆっくりと入っていった。
暖かい感触が、僕を包み込む。
押し出すような、引き込むような、微妙な動き。
セリオの中は、燃えるように熱かった。
「ご主人様を──感じます」
奥まで入ったところで、セリオが熱い吐息を漏らす。
「不思議な感じ──です。これまでとは違う気持ちが、心の中からあふれる
ような…あっ」
深くつながったままで、セリオの唇をふさいだ。
そのまま、舌を絡める。
「セリオ…」
服の上から、強く胸を揉んだ。
布の感触の中に、セリオのつんと立った突起の感触がある。
指先でそれを挟み込むようにして、何度も何度も、手のひらで刺激を
加えていく。
「ご主人様──好きです。大好きです」
セリオの足が、僕の身体を絡め取る。
より深くつながるよう、欲しているかのように。
「僕もだ…愛しているよ」
言葉とともに、セリオの中へと深く入り込んだ。
何度も何度も、行き来する。
「ご主人様──ご主人様が、…んっ」
床についた僕の手に、セリオの指が触れた。
何かを求めるように、弱々しく開かれた指先。
それを、僕は柔らかく握りしめた。
「セリオ…」
それに応えるように、セリオの指先に力がこもる。
「…っ、ああっ…」
僕の動きに合わせるように、セリオの声が高まっていく。
きゅっ、きゅっと、高まる声と同期するかのように、セリオが僕を
締め付けていた。
ぬめぬめとした熱い感触。
そして、セリオのあえぎ声。
暗やみの中に浮かび上がる、切なげな表情。
すべてが、僕を刺激していた。
「ご主人様──タカヒロ様…」
上ずったセリオの声が、僕の名を呼んだ瞬間。
僕の中から、セリオへの想いが吐き出されていった。
びくっ、びゅくっ。
自分の身体の一部が、別の生き物のように何度も跳ねる。
「あ……ああ…んっ…」
同期するように、セリオの声が流れる。
ぴくっ、ぴくっと、小刻みにセリオの身体が跳ねていた。
僕は、そのままセリオを抱きしめるようにして、床の上へと倒れ込んだ。
セリオの肌のなめらかな感触を、僕はゆっくりと楽しんでいた。
「──タカヒロ様」
うつぶせになっていたセリオが、顔だけを僕のほうに向けた。髪が数本、
顔の上に落ちてくる。
「──これからもずっと、私のご主人様でいてください」
真剣な顔で、セリオが僕を見つめた。
「お願い──します」
「なんだい、突然」
唇にかかった髪をはらい上げながら、僕はセリオの髪に手を梳きいれた。
「セリオは、僕の大事なセリオだよ。これまでも、これからもずっと…」
「──でも、ご主人様。この行為自体はもともと子供を作るためのもの…
ですよね?」
悲しげな瞳が、僕を見つめる。
「残念ながら、わたしには子供はできません」
「…それ以外の意味も、あるんだよ。“大好き”っていう気持ちを、
伝えるためのね」
ゆっくりと、セリオの髪をなでる。
「──でしたら、たくさんしたいです。とりあえず、もう一度だけでも」
「…身体、もつかな」
言いながら、目を閉じたセリオに、唇を重ねた。
「ところで、今日はいつもより、ご主人様の興奮状態が高かったように
感じたのですが──」
自分の格好を見ながら、セリオが言葉を続けた。
「──こういったシチュエーションがお好きなんですか?」
「…い、いや」
どもりながら、小首をかしげるセリオを見つめる。
「よろしければ、これからは、ずっとこの格好をいたしますが」
「…ずっとはやめてくれ」
少し心惹かれながら、首を振る。
「では、あらたなコスチュームで?」
「看護婦さんとか、いいなぁ…って、セリオ、なんでそんなことを?」
苦笑しながら、僕は聞いた。
「ご主人様の、教育のたまものです」
真面目な顔で、セリオが応える。
思わず、顔を見合わせたまま、僕たちは笑い出した。
頬を染めたセリオの、心からの笑顔は、僕にとってなににも替えられない
宝物だった。
《終》
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